松田公太さん著『愚か者』を読んで

2016年8月24日

本を読むのは結構好きなのですが、最近読んだ中では現在参議院議員をされている松田公太さんの『愚か者』が面白かったので、感想をまとめてみました。一人でも多くの方に読んでいただきたい1冊です。

「愚か者」とは誰のことか?

愚か者という、シンプルかつ刺激的なタイトル。最初書店で見かけたときタイトルを見た時は、今の政治状況を糾弾する内容なのかなと思いました。安保法案採決時の騒動など、党利党略しか考えないでパフォーマンスを行う政治家を「愚か者」、と呼んでいるのかなと。

安保法案採決の際、賛成と引き換えに修正案を政権側に閣議決定させるという、賢明な行動を取られていたということを私は知っていたので尚更です。

本帯には「はじめに」より引用された一節が。そこに書いてあった「愚か者」の正体とは、ほかならぬ松田さん自身のことだったわけです。松田さんといえばタリーズコーヒージャパン、エッグシングスジャパンの創始者であり、今は参議院議員。そのご自身を「愚か者」とは一体どういうことなのか。そういう興味から本書を購入するに至りました。

困難に直面しながらも挑戦を続ける姿勢

本書を読んで最も感銘を受けたのは、松田さんの挑戦を続ける姿勢です。普通に考えれば、タリーズジャパンを創設するというほどの大きな挑戦をすることもなく一生を終える人がほとんどだと思います。

タリーズへの敵対的買収から、タリーズの経営理念を守るために、松田さんは社長の座を退く決断をされます。おそらく苦渋の選択ではあったと思いますが、それにめげることなく、逆に自由の身になったことを生かしてシンガポールでビジネスを展開。

そのビジネスも米国タリーズとの関係や、リーマンショックなどが原因で半ば失敗(と言っては失礼かもしれませんが…)という結果に。ご自身も大きな悔しさが残ったと本書で述べられています。

松田さんの挑戦はそれで終わらず、今度は朝食レストランとして知られるエッグシングスジャパンを創設。その後、出馬打診を受けたのをきっかけに2010年の参議院選挙に出馬されました。

こうして折れずに挑戦を続けていく姿勢は、これから何かに挑戦しようとしている人に勇気を与えてくれるのではないでしょうか。

志を持った政治家

私自身選挙で松田さんに一票を投じたということもあり、Twitterをフォローしたりブログを読んだりと、政治家としての活動をウォッチしてきました。多忙な毎日を送っておられることは間違いないですが、ブログは毎日更新されています。

政治家としての行動は松田さん自身や党の利益のためでなく、国・国民のことを考えているということが伝わってきます。最近は軽減税率についてもブログで意見を述べられていましたが、完全に同意です。私も軽減税率反対ですし、適用するなら新聞よりネットの接続料金が先だろう、と。

政治の世界は順風満帆とはいかないようです。みんなの党も、しがらみやしきたりから完全に自由な党というわけではなかったようで、最終的には解党という結末になってしまいました。おそらくタリーズ社長の座から退いた時と似たような思いだったのではないでしょうか。

政治の世界でも折れずに挑戦

思い入れがあったであろうみんなの党は解党してしまいましたが、そこで折れることなく新党「日本を元気にする会」を結成するという新たな挑戦。こちらの政党は党議拘束がなく、重要な議題についてはVote Japanの会員による投票を元に、国会での投票行動を決定するようです。

今までの政党の概念からすれば考えられない、新しい政党の形。幾度となく挑戦を続けてきた松田さんが主体となって結成したからこそ、実現することができたのではないでしょうか。

日本を元気にする会、通称「元気会」が安保法案成立の裏側でどのような働きをしていたのか、ご存知でない人も多いかと思います。簡単に言うと、与党に「自衛隊の派遣には国会の承認が必要」という修正案を承認させる代わりに、元気会(を含む3党)が賛成に回るということ。

その時の松田さんの思いはこちらの記事に書かれています。

負け戦が明白な時は、方針を切り替えて、被害を少しでも減らすという考え方もトップにとっては必要なのです

という言葉。かねてより政治に経営者目線を入れなければならない、と主張されていましたが、元経営者ならではの決断だったのではと思います。

日本の政治には絶望した、と考えている人も少なくはないかもしれません。しかし、こうして志のある議員が政界で頑張っている限り、私は政治に対して絶望したくはありません。(無論、志のある議員は松田さんだけでなく、自民党・民主党など他党にもいると思います)

挑戦する勇気を与えてくれた本

私自身、「プロの作曲家になる」ということに挑戦しています。音楽だけで食べていける人はそう多くはないでしょうから、私も「愚か者」かもしれません。巻末に「愚か者」のススメと題したメッセージがありますが、これを読めば別に愚か者でも良いじゃないかと思えてきます。

成功すればもちろんベストかもしれませんが、失敗したら失敗したで、今までは見えなかった別の道が見えて来るということもあるかもしれません。