池田信夫さん著『今さら聞けない経済教室』を読みました
言論プラットフォーム「アゴラ」の設立者や、経済学者として知られている池田信夫さんが書かれた『今さら聞けない経済教室』の紹介です。
多くの人に読んでほしい一冊だなと思いましたので、簡単にレビューしてみたいと思います。
「アゴラこども版」を元にして書かれた本
本書は池田さんがアゴラで連載していた「アゴラこども版」を元にしてかかれた本とのこと。前書きでも述べられていますが、”こども版”と言いつつも実際は経済学を知らない大人に丁度良いくらいのレベルの内容で、私もよく読んでいました。
Q&A形式で書かれており、難しい経済学用語は出てこないので、経済学を初歩から学ぶための本というわけではありません。
今の日本を取り巻く経済・財政の問題を扱っているので、問題意識を持って読むことができます。
社会保障の章は必読
第10章では、社会保障の未来についてのQ&Aがまとめられています。この章は、特に若い人には是非読んでいただきたい部分です。
学習院大学教授の鈴木亘さんが行ったシミュレーションによれば、今の社会保障システムが変わらないままだと、2075年には国民負担率が100%を超えるとのこと。
当然そのようなことはありえないので、それまでに何かしらの手が打たれるか、はたまた日本の年金制度が破綻するかということになるわけですが…
その原因は、少子高齢化による労働人口の減少や、日本が経済成長できないことなどがあるわけですが、何か対策をとったところですぐに有効打とはならないでしょう。
ハッキリ言ってしまえば、ある意味では”長生き保険”のような性質がある年金を、高齢者の資産の大小に関わらず一律に支給している現状を変えるのが一番有効なのです。
しかしながら、「政治家がこの問題を放置するのは、(選挙で)投票する人の半分は60歳以上の受益者だから」と池田さんが述べられている通り、社会保障の抜本的改革を訴えている政党がないのというのが現状です。
一方で、政治家個人で見れば、老人優位の政治と社会保障を見直すべきという主張をされている方もおられるわけですから、政党にとらわれることなく、そういった政治家の方を選んで投票したいですね。
女性が一生働ける社会を作ることの大切さ
Q59では「少子化対策も大切だが、働けるのに職についていない人が働けるようにすることも大切」で、そのためには「いちばん大事なのは、女の人が一生働ける社会に変えること」であるとまとめられています。
これは言われてみれば確かにその通りなのですが、女性が一生働ける社会を作るということは単に女性の権利の問題というだけではなく、日本のためにもなるという視点はありませんでした。
他にアベノミクスやエネルギー問題などについてもQ&A形式でまとめられていますので、日本の経済・財政問題が気になるという方は、ぜひ読んでみることをお勧めします。